遺伝に関する不安や悩み、抱え込まずに相談を
神経線維腫症1型と向き合う中で、「遺伝に関わる不安や悩みを相談したいけれど、誰に相談してよいかわからない」、「遺伝についてもっと詳しく知りたい」と感じている方はいらっしゃいませんか?その答えの1つが「遺伝カウンセリング」です。
今回は、遺伝カウンセリングとはどういうものかと、実際にカウンセリングを受けるときの流れなどについて、名古屋大学医学部附属病院の認定遺伝カウンセラー 森川真紀先生に伺いました。
ーお話をしてくださった方
認定遺伝カウンセラー
森川 真紀先生
名古屋大学医学部附属病院
ゲノム医療センター
遺伝カウンセリングとは?
- 不安や疑問を伺ったうえで、情報提供と心理的・社会的サポートを行います
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遺伝カウンセリングは、まず患者さんやご家族の不安や疑問を伺うことから始まります。そのうえで、相談内容に応じて医学情報や社会制度などの必要な情報を提供し、理解していただけるようにサポートします。 加えて、心理的・社会的な支援も行います。遺伝カウンセラーがお話を伺うことで気持ちが楽になる方もいらっしゃいますし、一緒に気持ちを整理して今後どうしていくかを考えることもあります。
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例えば、「親が自分の病気について理解してくれないので、親に説明してほしい」とおっしゃる方の場合、親御さんに病気のことを説明することももちろん可能です。しかし、なぜ理解してもらいたいのか、理解してもらえない理由は何か、あるいは、どのような関係になることを望んでいるのか、など患者さんの悩みの背景にあることにも目を向けていくと、本質的な解決につながりやすいと感じています。
遺伝カウンセリングには、医師と患者さん・ご家族の橋渡しをする役割もあると思っています。医師に相談したいことはあるけれど聞きにくいときなど、遺伝カウンセラーが間に入り、患者さんやご家族とより近い立場で話を聞くことで、医師と患者さんのコミュニケーションが円滑になることもあるのです。
最近は、インターネットを見て不安になったけれど相談する相手がいない、という方も多く相談に来られます。また、患者会の活動も活発で、情報共有もかなりされていますが、その分、いろいろな患者さんのお話を聞いて迷ってしまうこともあるようです。遺伝カウンセリングで小さな悩みを相談するのは気が引ける方もいると思いますが、不安や悩みがあったら一人で抱え込まず、気軽にご相談いただきたいです。
遺伝カウンセリングの対象となる方は?
- 患者さんのご家族や、病院に定期通院していない方など、誰でも相談できます
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遺伝や遺伝性疾患に関する悩みがある方は、どなたでも遺伝カウンセリングを受けることができます。患者さんご本人はもちろん、患者さんが小さいお子さんですと親御さんからの相談が主になります。また、相談先の病院を受診したことがない方でも相談できるところが多く、別の病院で診断されたけれど今はどこにも通院していないという方や、親族が遺伝性疾患で自分にも遺伝しているかもしれないという不安を持っている方なども相談に来られます。
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なお、当院では基本的にそれぞれの診療科を受診された患者さんやご家族にカウンセリングをさせていただく流れになっています。患者さんの病気の状態を把握したうえでカウンセリングをしたほうがより適切なお話ができると考えているためです。ただし、患者さんが当院の診療科を受診しにくい状況の場合は、受診なしでカウンセリングをさせていただくことも可能です。患者さんご本人は遠方にお住まいで当院を受診していないけれど、当院の近くに住んでいるご家族が遺伝カウンセリングを受けられたケースも経験しています。
遺伝カウンセリングのタイミングは?
- 不安や疑問があり、誰かに相談したいと思ったときに、いつでもご相談ください
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遺伝カウンセリングを受けていただくタイミングに決まりはありませんが、あえて定義するなら「患者さんやご家族に遺伝に関する不安や疑問があり、相談したいと思ったとき」だと考えています。例えば、結婚や、お子さんを持つなどのライフイベントの前に相談に来られる方が多いです。また、生まれたお子さんに症状があらわれたときや、お子さんが小学校に入学するとき、社会に出るときというタイミングの方もいます。ご自身のタイミングで相談していただくのがよいと思います。
- 結婚前
- お子さんをもうける前
- お子さんに症状があらわれたとき
- お子さんが学校に入学するとき
- お子さんが社会に出るとき など
遺伝カウンセリングのタイミングは、「患者さんやご家族に遺伝に関する不安や疑問があり、相談したいと思ったとき」が基本
相談が多いタイミングは…
遺伝カウンセリングはどんな場所でする?
- CounselingHeldSubHeading 静かな個室でカウンセリングを行い、秘密は厳重に守られます
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カウンセリングは静かな個室で行われることが一般的で、当院では遺伝カウンセリングルームを用意しています。ほかの人に話を聞かれることはありませんし、医療関係者は守秘義務がありますので、伺った内容が外に漏れることはありません。遺伝や遺伝性疾患に関することであればどのような相談でも、安心してお話しいただければと思います。
神経線維腫症1型で多いのは誰からの相談?
- この病気は、親御さんからの相談が多いです
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神経線維腫症1型で一番多いのは、お子さんに皮膚の症状があらわれたけれどまだ確定診断には至っていない、親御さんからの相談です。何に不安を感じているのか伺い、お子さんの今の状態や、神経線維腫症1型と診断されたときの今後の可能性についてご説明します。この疾患は、年齢ごとにあらわれやすい症状や病気の状態などがある程度わかっていますし、患者さんは他にも多数いらっしゃるため経験談を聞くこともできます。今後、気になる症状がお子さんにあらわれることがあるかもしれないけれど、そのときは一緒に考えていきましょうとお話しします。
確定診断がついたお子さんの親御さんからの相談も多く、今後、子どもにどのタイミングでどのように病気のことを伝えるべきかなど、一緒に考えていくこともあります。
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なお、当院では基本的にそれぞれの診療科を受診された患者さんやご家族にカウンセリングをさせていただく流れになっています。患者さんの病気の状態を把握したうえでカウンセリングをしたほうがより適切なお話ができると考えているためです。ただし、患者さんが当院の診療科を受診しにくい状況の場合は、受診なしでカウンセリングをさせていただくことも可能です。患者さんご本人は遠方にお住まいで当院を受診していないけれど、当院の近くに住んでいるご家族が遺伝カウンセリングを受けられたケースも経験しています。
神経線維腫症1型との向き合い方は?
- マイナスに思えることも、視点を変えれば見え方が変わってくるかもしれません
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ご自身の病気をマイナスに捉えてネガティブになられている方には、いろいろな考え方があることを知っていただきたいと思っています。就職や結婚、子どもをもつなどのライフイベントのほか、日々の生活の中でも病気を理由に何かをためらうことがあるかもしれません。しかし、誰でもなんらかの病気になる可能性はありますし、ご自身に合った仕事に就く、あるいはご自身の病気のことを理解してくれる方と一緒に家庭を築いていくなど、可能性はさまざまにあるのです。
もし子どもに神経線維腫症1型が遺伝したとしても、ご自身を責める必要はないと考えています。誰でも親から容姿や能力などさまざまな要素を受け継いでいます。それがたまたま神経線維腫症1型という病気だったと考えることもできますし、同じ病気を親が経験しているということは、お子さんの良き理解者、良き先輩になれるということでもあります。
一方で、神経線維腫症1型の方は、あらわれる症状によって仕事で苦労されることがあります。その方に合った仕事について一緒に考えたり、必要に応じてソーシャルワーカーにつなぐこともあります。
一人で悩んだり、ご家族など近い方だけで話されたりしていると、心配なことが増えてしまいがちですが、私たち遺伝カウンセラーが違う視点でお話しすることで、不安が軽減されることがあると感じています。ある患者さんが、「この病気があるからこれができない」ではなく、「この私として生きていく」という考え方に変わり、ライフプランにも前向きになられたときはとてもうれしく思いました。違う視点を受け入れるのが難しい方は、時間をかけてサポートしていきたいと思っています。
神経線維腫症1型患者さんへのメッセージ
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一番お伝えしたいのは、不安や疑問を患者さんやご家族だけで抱え込まないようにしてほしいということです。今回ご紹介した遺伝カウンセリングで、不安が軽くなったり、疑問が解消したりすることもありますし、医師に相談する、あるいは患者会に参加することで病気への理解が深まることもあると思います。
その時々でご自身に合った選択をし、「神経線維腫症1型と共に生きる」という視点で、その方らしく、ご家族らしく生活できるのが一番です。迷われたときには、ぜひ遺伝カウンセリングをご活用ください。
- 通院している場合(医療機関の遺伝専門の科の有無を問わず
- 通院していない場合
遺伝カウンセリングの基本情報
遺伝カウンセリングを受けるときの問い合わせ方法
遺伝カウンセリングの時間
費用
遺伝カウンセリング前の準備
総合監修
福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授
今福 信一 先生
1991年3月九州大学医学部を卒業。九州大学医学部附属病院 皮膚科学教室医員、メリーランド大学医学部 ウイルス学研究員、国家公務員共済新小倉病院 皮膚科医長、九州大学医学部 皮膚科教室助手、広島赤十字・原爆病院 皮膚科・診療部長、九州大学医学部 皮膚科教室助手・病棟医長、北九州市立医療センター 皮膚科・主任部長を経て、2007年4月福岡大学医学部 皮膚科学教室講師、2009年4月同大学 准教授、2014年4月同大学 教授、現在に至る。