叢状神経線維腫(そうじょうしんけいせんいしゅ)のポイント

  • 神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病、NF1)患者さんの約半数に発生すると考えられている良性の腫瘍です。良性ですが大きくなりやすく、変形により日常生活に困る場合もあります。
  • 痛みや体の動かしづらさといった症状以外にも、腫瘍が原因とは気がつきにくい困りごとや不調が引き起こされていることもあります。
  • 子どもの患者さんも大人の患者さんも、腫瘍による影響があれば手術、手術が難しければ内服薬による治療が検討されます。
  • 痛みなどの症状といった腫瘍による影響に加え、病院での処置が必要な出血が起こる場合があること、一部が悪性腫瘍(がん)に変わる場合があることから、注意が必要な腫瘍と考えられています。

叢状神経線維腫とは?

叢状神経線維腫は、体の内部にできる良性腫瘍の一種です。神経を包んでいる細胞が必要以上に増えてしまうために発生すると考えられています。
皮膚の表面に近い場所にできた場合には、その部分が盛り上がって見えることもありますが、体の奥深くにある場合は見た目では分からないこともあります。
叢状神経線維腫には、神経に沿ってできる「神経の神経線維腫」、徐々に大きくなり、垂れ下がってくることもある「びまん性神経線維腫」が含まれます1,2)。びまん性神経線維腫は、大きなしみ・あざがある箇所にできる場合があります。

* 「びまん」とは、特定の1か所ではなく広範囲に広がっている様子を意味します。

※ 皮膚にできる直径1~2cm程度の「皮膚の神経線維腫」1)は、叢状神経線維腫とは別の腫瘍です。

皮膚の表面近くの叢状神経線維腫及び体の奥深くの叢状神経線維腫の絵

どれくらいの割合で
発症しますか?

海外の研究によると、診察でわかる叢状神経線維腫は神経線維腫症1型患者さんの約30%、検査(全身のMRI)をすると50~60%の患者さんで見つかると推測されています3-6)

叢状神経線維腫を持つ患者さんの割合の絵

どんな影響がありますか?

叢状神経線維腫は特定の場所ではなく、全身のどこにでもできる可能性があります。そのため、腫瘍ができる場所や患者さんの状態によって、あらわれる影響はそれぞれ異なります。具体的な例としては、見た目の問題や痛み、体の動かしづらさ、体の機能への影響などが挙げられます4,6-11)。症状がない患者さんもいる一方で、自分では気がついていなくても、実は腫瘍が原因で日常生活での困りごとや不調が起きていたという患者さんもいらっしゃいます。

今福先生の絵

福岡大学医学部
皮膚科学教室 教授
今福 信一 先生

総合監修医からの+α

叢状神経線維腫と診断された方の中には、何も困りごとがない患者さんもいれば、歩きにくさや座りにくさ、睡眠への影響など、さまざまな影響を感じている患者さんもおられます。
このように症状や生活への影響は人それぞれで非常に幅広いため、限られた診察時間の中では、私たち医師が患者さんの抱えるすべての困りごとを把握するのは難しいと考えています。もし、何か気になることや、「おかしいな」と感じることがあれば、診察の際に遠慮なく医師へお伝えください。

どのように治療しますか?

子どもの患者さんも大人の患者さんも、腫瘍による影響があれば手術、手術が難しければ内服薬による治療(薬物治療)が検討されます6)

治療の方法を示した絵

しかし、腫瘍のできる場所や患者さんの状態によって、受けられる治療や適した治療が異なるため、ご自身やご家族の治療については主治医の先生と相談して決めていくことが大切です。
症状や体への影響がない場合には、すぐに治療を始めないこともあります。そうした場合でも、適切な時期に治療を始められるように、定期的に受診して、体の状態や変化を注意深く確認していきます。

なぜ注意が必要なのですか?

今福先生の絵

福岡大学医学部
皮膚科学教室 教授
今福 信一 先生

総合監修医からの+α

悪性腫瘍(がん)への変化を心配しすぎる必要はありませんが、もしもの変化に早く気づき、適切な対応をするために、以下の2点を意識して行動していきましょう。

  • 定期的に受診して、腫瘍の状態を確認すること
  • 痛みが出てきた、痛みが強くなった、腫瘍の硬さが変わった、急に大きくなったなど、気になることやこれまでと違う変化があれば、迷わず早めに受診すること

叢状神経線維腫が
あると言われたら、
どうすればよいですか?

定期的に受診して、叢状神経線維腫の状態に変化がないか確認していきましょう。もし、日常生活での困りごとや何かしらの不調があれば、医師に相談してみましょう。

  1. Yoshida Y. Keio J Med 74(1): 37-41, 2025[COI:著者は、アレクシオンファーマ合同会社からの謝礼金を受領している]
  2. 神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018
  3. Huson SM. et al.: Brain 111(Pt 6): 1355-1381, 1988
  4. Plotkin SR. et al.: Plos One 7(4): e35711, 2012
  5. Jett K. et al.: Am J Med Genet A 167(7): 1518-1524, 2015
  6. 叢状神経線維腫-悪性末梢神経鞘腫瘍診療ガイドライン作成委員会(編): 叢状神経線維腫-悪性末梢神経鞘腫瘍診療ガイドライン, 第1版. 医学図書出版, 東京: p16-17, 30, 33, 2024
  7. Akshintala S. et al.: Neuro Oncol 22(9): 1368-1378, 2020
  8. Avery RA. et al.: Am J Ophthalmol 155(6): 1089-1094.e1, 2013
  9. Mautner VF. et al.: Neuroradiology 48(3): 160-165, 2006
  10. Nguyen R. et al.: J Pediatr 159(4): 652-655.e2, 2011
  11. Prada CE. et al.: J Pediatr 160(3): 461-467, 2012
  12. Gross AM. et al.: Neuro Oncol 20(12): 1643-1651, 2018
  13. Waggoner DJ. et al.: Am J Med Genet 92(2): 132-135, 2000
  14. Feng Y. et al.: Eur J Med Res 15(2): 84-87, 2010

総合監修 
福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授 
今福 信一 先生

1991年3月九州大学医学部を卒業。九州大学医学部附属病院 皮膚科学教室医員、メリーランド大学医学部 ウイルス学研究員、国家公務員共済新小倉病院 皮膚科医長、九州大学医学部 皮膚科教室助手、広島赤十字・原爆病院 皮膚科・診療部長、九州大学医学部 皮膚科教室助手・病棟医長、北九州市立医療センター 皮膚科・主任部長を経て、2007年4月福岡大学医学部 皮膚科学教室講師、2009年4月同大学 准教授、2014年4月同大学 教授、現在に至る。