患者会To smileからのアドバイス〜上⼿に付き合う、⼒になる〜

同じ疾患や障害の当事者の方々が参加する患者・家族会(患者支援団体)は、難病においても多く組織されています。患者・家族会は参加された方々が交流を図り、きめ細かい情報が得られる有用な場ですが、活動内容について詳しくは知らないという方もおられるのではないでしょうか。そこで、神経線維腫症1型における患者・家族会のひとつである任意団体To smile代表の大河原和泉さんに、患者・家族会の活動内容などについてご紹介いただきました。

■お話しをしてくださった人

任意団体To smile

代表 大河原和泉さん

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■お話しをしてくださった人

任意団体To smile

代表 大河原和泉さん

コラム
「患者・家族会の変遷」

疾患や障害にともなう様々な困難は、ご本人やご家族だけで克服しきれないことも多いでしょう。そこで、同じ悩みを持つ方々が団体を組織し、情報交換をはじめ、ともに支えあうことを目的とするのが患者・家族会の原点です。活動の輪が広がると、医師をはじめとした医療関係者や福祉関係者、製薬企業、大学などの研究機関も加わり、NPO法人や財団法人として組織化されることもあります。また、社会に向けた情報発信など、より多くの人を対象にした活動が行われることもあります。近年はSNSを通じて同じ悩みを持つ患者・家族が集まり、情報交換などを行う「患者コミュニティ」という形の団体も増えています。

当事者目線での情報が得られる患者・家族会

私は、神経線維腫症1型の患者・家族会である任意団体To smileの代表を務めています。その設立は、神経線維腫症1型患者である娘についての情報発信をブログで始めたことにさかのぼります。というのも、当時インターネットなどのメディアでは神経線維腫症1型についての客観的な情報が少なかったのです。「これはおかしい。神経線維腫症1型の人も普通に生活しているんだ」と強く感じた私は、おしゃれを楽しむ娘の様子を交えながら情報を積極的に発信しました。

疾患について知るには、インターネットなどのメディアはとても便利な方法です。しかし、神経線維腫症1型の情報に関してはまだ限定的で、ネガティブなものも少なくありません。これは神経線維腫症1型を疑う、あるいは診断された方々が現実から目を背けてしまう原因となりかねないでしょう。その点、患者・家族会であれば、当事者の目線によるリアルな情報を得ることができます。実際、To smileの会員さんのなかにも、リアルな神経線維腫症1型の情報に触れて、「安心した」「もやもやが解消してスッキリした」とおっしゃる方々が多くいらっしゃいます。

現在、私たちはLINEグループでのつながりをベースとする、いわば患者コミュニティと言える組織ですが、神経線維腫症1型について患者さんやご家族が本当に必要としている情報に触れる機会を広げるべく積極的に活動を続け、将来はNPO法人化も考えています。

すべての患者さん・ご家族が疑問や不安を相談できる場をつくる

神経線維腫症1型は、いわゆる“専門医”の数が非常に限られています(正確にいえば神経線維腫症1型の専門医制度があるわけではなく、神経線維腫症1型を専門に研究・診療されるお医者さんがとても少ないということです)。ですから、患者さんやご家族のなかにも専門医の先生に診てもらえる機会が限られ、自身が抱える疑問や不安をぶつけることができずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。その課題に向きあうことも、患者・家族会の大切な役割だと考えています。

たとえば、To smileは患者さん・ご家族に向けた専門医による講演を各地で開き、それにあわせて皆さんの情報交換の場として交流会を併催しています。名古屋での開催時にはおよそ100名の方々が集まり、多くの方々がこのような機会を待ち望んでいたことを実感しました。このような工夫は、今後も継続していきたいと考えています。

また、参加者同士の交流を通じて、悩みを相談し不安を共有できる相手と出会えることも患者・家族会ならではのメリットです。神経線維腫症1型の患者さんやご家族には、孤独感を抱えているケースも多く見受けられます。そうした方々に寄り添い、孤独感の軽減に貢献することは、患者・家族会の大切な役割だと考えています。

「知ること」の意味

病気と向き合うことは簡単ではなく、ときに現実から目を背けたくなることもあるかもしれません。それでも、「知ること」には是非取り組んでみてください。知ることで、病気のことを不安に感じすぎず、正しく認識できるようになるはずです。実際に、大きな不安を感じながらもTo smileへの参加を迷われていたご家族が、交流会に参加し素直なお気持ちを話したところ、同じ状況のご家族からアドバイスや励ましを受け、不安が和らいだというケースを多く経験しています。

関心をもったそのときが参加のタイミングだと思いますので、皆さんも是非参加してみてください。

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当事者の方々それぞれに応じたフォローを

インターネットなどのメディアで紹介されている神経線維腫症1型は、ときに非常に限定的な症例を取り上げていることもあり、患者さんやご家族の不安要因となる可能性もあります。一方で患者・家族会は、その方の状況にあわせたアドバイスや情報を入手しやすいと思います。たとえば「うちの子にこうした症状が出たが、どうしたらいいだろう」と投げかけると、同様な経験をした会員さんから「その症状なら、ここに詳しい先生がいる」「こんな可能性もあるから注意して」といった回答をリアルタイムに得ることができます。このように、当事者それぞれに応じた情報がフォローできるという点も、患者・家族会の大きなメリットのひとつでしょう。

また、症状や治療のほかにも、神経線維腫症1型の患者さんやご家族はさまざまな悩みを抱えておられます。そこで、私たちは悩みのテーマごとにグループを設けた交流も図っています。同じ悩みを抱えた方々だからこそ共有できる“プラスαの悩み”について話し合えるのも患者・家族会のよいところだと思います。

患者さん・ご家族が暮らしやすい社会を目指して

私たちが目指しているのは、神経線維腫症1型の患者さんやご家族が暮らしやすい社会の実現です。とはいえ、現実は簡単に変えることはできません。それを達成するためには、まず当事者である私たちが勇気を持って一歩を踏み出す必要があります。一歩目がなければ、二歩目はありません。踏み出した歩みが続けば、やがて私たちの挑戦は社会の多くの人に伝わり、変化が生まれていくと信じています。

そして、患者・家族会は患者さん・ご家族が一歩目を踏み出すために、私たちができるサポートだと考えています。誰も歩いたことがない荒れたすき間を、患者さんやご家族が自在に歩けるように拡げて整える。そして、いろいろな人がすれ違い、触れ合い、語り合える。歩幅は小さくてもいい。スピードも人それぞれでも構いません。そういった道を、私たちはつくりたいのです。その先にはきっと、患者さんやご家族が「世の中捨てたもんじゃないな」と笑顔で口にしながら、前を向いて暮らしていける未来があると信じています。

(取材日:2021年12⽉)

動画【Be yourself, for your dream.】

出演:To smile代表 大河原和泉さん(患者さんのご家族)、ガラス作家 大河内愛美さん(患者さん)