資格を取得し、歯科医院に勤務でも、状況が変わって……

高校卒業後、専門学校に進学した美咲さんは、国家資格である歯科衛生士の資格を取得しています。もともとは「自分と同じように悩んでいる人の助けになりたい」と、看護師になることを考えていましたが、適性などを考慮して断念。手に職をつけたい、資格があって多くの人の役に立てる仕事は何か……。親子で相談して、歯科衛生士をめざすことにしました。


専門学校での勉強も苦労の連続でしたが、「いつも必死」の努力が実り、無事に資格を取得。卒業後は実家を出て、一人暮らしをしながら歯科医院に勤め始めます。面接の際には、自分の病気について伝えたうえで就職しました。一人暮らしもまた、自立を見守りたい母・麻衣さんの願いでした。


しかし、美咲さんはここで壁に直面しました。同僚たちができて当然のようにこなしている作業が、美咲さんにはできません。教えてもらい、自分なりの方法を見つけることができさえすればできるようになるものの、そこに至るまで時間がかかってしまいます。「研修は3ヵ月で修了しないといけないのに、私には難しいところもあって。学生時代のように周りがやさしく手助けしてくれるわけでもないので、大変でした」と、当時の苦労を振り返ります。


その頃、症状にも変化がありました。通常、腫瘍による痛みは「足がつるような感覚」でしたが、ある日、背中から腰にかけて激しい痛みがあり、それが2日、3日と続きました。「いつもと違う、おかしい」と思って大学病院を紹介され詳しく検査を受けたところ、腫瘍の一部が悪性化しつつあることがわかりました。定期通院時は触診のみで、画像検査は半年に1回の頻度でした。腫瘍の悪性化には痛みが出ることも多く、自覚症状の変化も重要だそうです。


医師の判断は「完全に悪性化はしていない可能性がありますが、放置せず、手術で取り除いたほうがよいでしょう」。速やかに手術を受けました。1回目の手術では悪性化しつつある腫瘍を除去しましたが、その後の検査でまだ悪性化の心配がある腫瘍があり、半年後に再手術しました。以降は検査の間隔を短くしつつ、経過を観察している状態です。


仕事上の困難に、治療のために休みがちになったことなどが重なり、せっかく取得した歯科衛生士の資格ではありましたが、歯科医院は退職せざるを得ませんでした。

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BIOGRAPHY & Words
おなかに、うっすらとしたあざ「なんだろう?」 「どうしてできないの?」衝突してしまうことも 「病人扱いされたくない」同級生以外には病気を伏せていた 初めて感じた、勉強のおもしろさ「普通が、すごいこと」 考えるのは自分、決めるのも自分 資格を取得し、歯科医院に勤務でも、状況が変わって…… 自分の経験を活かせる、人の助けになる仕事がしたい