自分で考え、選択してきたこれまでの道
すべての経験が今の糧に

孤発性のNF1患者さん

小林 美咲さん(仮名)
20歳代 女性

小林 美咲さんのことば

病気だからとあれこれ制限をかけることなく、母は私を、一人の人間として育ててくれました。習い事も、水泳にピアノ、ダンスに習字と、みんなと一緒のところに通わせてくれて。友だちや親切に教えてくださった先生方の記憶とともに、楽しい思い出となっています。 中学生までは、通院・入院に家族の誰かが付きっきりでいてくれました。今は一人暮らしですが、大変なときには母に助けてもらっています。家族には感謝しかありません。 歯科医院に就職し、つらいこともあって退職してしまいましたが、その経験は今の私の糧になっています。

母 麻衣さん(仮名)
40歳代 女性

母 小林 麻衣さんのことば

美咲は私に、自分の痛みのことをすべて話していたわけではないでしょうし、学校でも職場でも、私が聞いていない苦労や悩みをたくさん経験してきたはずです。でも美咲は昔から強い子で、なんでも根性で乗り越えてきました。美咲のがんばりを見て、母として私自身も成長させてもらった気がします。

体に、うっすらとしたあざをもって生まれてきた美咲さん。
2歳のときに、神経線維腫症1型(NF1)と診断されました。母・麻衣さんが「強い子」と表現する美咲さんは、NF1の症状である体のあざと、学習障害に悩むこともありましたが、そのたびに自分で考え、自分で選択して、ここまで歩んできました。 さまざまな経験を経て自立する美咲さんが今、思うこと、美咲さんの歩みを見守ってきた麻衣さんが今、感じていることを、語っていただきました。

監修者のことば

神経線維腫症1型(NF1)は、カフェ・オ・レ斑という茶褐色の皮膚色素斑が特徴的な遺伝病です。色素斑だけでなく、いろいろな症候を身体の多くの部位に発症する可能性があります。その中に発達障害も含まれます。NF1患者さんの中には、子どもの頃から落ち着きがない、待てない、学習が苦手、などの症状が出る方がいらっしゃいます。「落ち着きなさい」、「なんでわからないの」、といった否定的な言葉をかけられることで自己肯定感が持てなくなります。小児神経を専門とする医師に適切に評価してもらい、家族、担任の先生などが発達障害の程度を正しく理解し、肯定的に接することが重要です。
NF1では、皮膚の神経線維腫も特徴的な症候です。それよりも深い部分に叢状(そうじょう)神経線維腫という腫瘍が発生することがあります。これは若い時期から悪性に変わる可能性がある腫瘍です。腫瘍を専門とする医師の診察を受け、早期に診断、早期に治療することが極めて重要です。私たちも、適切に診断・治療を受けられるようNF1患者さん、ご家族、医療関係者に対して啓発活動を続けてまいります。

名古屋大学医学部附属病院
リハビリテーション科 教授
西田 佳弘 先生

これまでの歩み
Vol.2 トップ
BIOGRAPHY & Words
おなかに、うっすらとしたあざ「なんだろう?」 「どうしてできないの?」衝突してしまうことも 「病人扱いされたくない」同級生以外には病気を伏せていた 初めて感じた、勉強のおもしろさ「普通が、すごいこと」 医師や学校の先生との出会いが支えになった 資格を取得し、歯科医院に勤務でも、状況が変わって…… 自分の経験を活かせる、人の助けになる仕事がしたい