
孤発性のNF1患者さん
母 岡本 真由美さん(仮名)
60歳代 女性
母 岡本 真由美さんのことば
NF1への社会の認知・理解が、もっと進んでほしいと思っています。たとえば整形外科でリハビリを受けるときに「肌をさらしたくない」と訴えても意図が伝わらず怪訝な顔をされたり、美容院で肌のしみをじっと見られて嫌な思いをしたりした経験があるNF1患者は、私だけではないと思います。
最近、NF1を取り巻く環境が大きく変わってきていて、それはとても歓迎すべきことですが、最終的には人が変わらないと、NF1を持つ患者の生きづらさは変わらないのではないかと思います。医療現場や教育現場での理解が進み、生きづらさが少しでもやわらいでいくことを願っています。

遺伝性のNF1患者さん
長男 亮さん(仮名)
30歳代 男性
長男 岡本 亮さんのことば
私は医療機関で救急救命士として働いていますが、医療の現場でさえ、まだNF1への理解が不足している、偏っていると感じています。患者の既往歴にNF1があると、すべての症状がNF1に関連づけられてしまうことがあります。NF1を持つ患者に出会ったとき、患者が訴える症状とNF1との関連を考慮することは、もちろん大切なことです。ですが、まずは一人の人間として患者に接して、目の前の症状を診ていただきたいと思います。

遺伝性のNF1患者さん
長女 茜さん(仮名)
30歳代 女性
長女 岡本 茜さんのことば
NF1を持っていると、あざを隠せる衣服を探すのが結構大変です。気に入った衣服があっても、背中が大きく開いていると買うことができません。どうしてもあきらめられなくて、買ったあとで補整したこともあります。NF1を持つ患者が着やすい衣服が、もっと増えたらよいのにと思います。
私は夏でも長袖の衣服を着ることが多いのですが、どうしても周囲の視線が気になってしまいます。最近は日焼けを気にして長袖を着る人が増えてきていて、その点では少し過ごしやすくなったかもしれません。
小学生の頃から、顔の小さなあざに悩まされてきた岡本真由美さん。
自分はどこか人と違うな……と思いつつも、病気とは気づかないまま結婚・出産。長男・亮さんを連れて皮膚科を受診した際、「神経線維腫症1型(NF1)」の可能性を指摘されましたが、確定診断を受けたのはそれから20年以上あとのことでした。
真由美さん、亮さん、そして長女・茜さんがNF1と診断された、岡本さんご一家。歩んできた道には苦難もありましたが、寄り添い、支え合って乗り越えてきました。
家族のこれまでとこれから、そして社会に望むことを、三人それぞれの目線から語っていただきました。
監修者のことば
神経線維腫症1型(NF1)は、生後からみられるカフェ・オ・レ斑という茶褐色の楕円形の色素斑で気づかれることが多い遺伝性の病気です。色素斑だけではなく、年齢を重ねるうちに骨の変形がみられる、皮膚や皮下に腫瘍を形成する、痛みを伴う、消化管の腫瘍がみられるなど、さまざまな臓器に症状がみられる可能性があります。ただし、これらは個人差が非常に大きく、一様に生じるわけではありません。インターネットの普及によりNF1の情報を得ることは容易となりましたが、各々の患者さんで対応が異なります。
今回ご紹介しましたケースのように、患者さんはNF1という病気を理解する年齢やその過程、もしくは病気を理解できない年齢でも外見上の問題からさまざまな悩みに直面することも多いと思います。医療従事者は患者さんやご家族とコミュニケーションをとり、不安をできるだけ減らすことができるよう直面する問題点を共有し、正しい情報をお伝えし、他診療科と連携するなど包括的なサポートが重要であると考えています。NF1の患者さんが『普通の生活』を送れるように、NF1という病気に対する理解を社会全体でめざしていければと考えています。
埼玉医科大学病院 皮膚科 講師
宮野 恭平 先生
