真由美さんは、インターネットで探した情報などから、自身も二人の子どもたちもNF1であろうことは半ば確信していました。はっきりとした診断は受けないままでしたが、日焼けに注意したり目の検査は毎年受けさせたりするなど、一つひとつのことに対応しながら子どもたちを支え、日々を過ごしていきました。
長男・亮さんの症状はカフェ・オ・レ斑のみで、大学を卒業した後、救急救命士をめざして専門学校に通うようになっていました。一方、大学在学中の長女・茜さんは、神経線維腫に伴う痛みを真由美さんに訴えることが増えてきていました。また、真由美さん自身も、40歳ごろに乳腺にこぶし大のしこりが見つかり、一時は乳がんが疑われましたが、再検査で良性腫瘍であることがわかり、切除手術を受けていました。
亮さんが皮膚科を受診し、「NF1かもしれない」と告げられてから20年以上が経過したある日、真由美さんは新聞に掲載されていたNF1の記事を読みました。偶然目にした記事に書かれていたNF1の症状は茜さんのものに近く、真由美さんは心を動かされました。新聞社を介して記事で紹介されていた患者さんに直接連絡を取り、NF1の専門医を教えてもらいました。
真由美さんは「家族そろって、教えていただいた大学病院の皮膚科を受診しました。自分なりに調べて心の準備はできていましたが、そこで初めてNF1と確定診断を受けました。病気についてしっかりと説明を受けたことで、精神的に楽になりました。『やっとたどり着いた』という気持ちでした」と語ります。

亮さんと茜さんは、その場で初めて病名を耳にすることになります。亮さんは医療系の専門学校に通っていたこともあり、「ショックというよりも、パズルのピースが埋まった感覚でした。ああ、そういうことだったんだと納得したというか」と、冷静に受け止めました。一方、茜さんは病気、しかも難病と告げられたことで激しく動揺します。
「当時は治療薬もないと聞かされ、その瞬間は大泣きしました。原因がわかればなんとかなるという、小さな希望がなくなってしまった気がして。ですが、先生が詳しく説明してくださって、『手術が必要になったら、私がすべて担当しますからね』とも言ってくださったので、安心したのを覚えています」
それぞれに病気を受け止めている二人を横目に、真由美さんの頭の中には「私のせいで……」と、自分を責める言葉が渦巻いていました。そんな真由美さんに向けて、医師が声をかけました。
「病気はお母さんのせいではありません。誰のせいでもないんですよ」
「先生にそう言っていただいて、私も大泣きしてしまいました。私はこの言葉のお陰で気持ちを立て直すことができましたし、今まで歩んでこられたと思っています。その後もNF1について、どのような症状が起こりやすいのか、どのような検査が必要なのかなどさまざまなことを教えていただき、私たち家族は前に進むことができました」
