「この子たちに幸せに生きてほしい。今の私の、心からの願いです」
長男の亮さん、長女の茜さんを見つめながら、岡本真由美さんはこう語ります。三人はともに、神経線維腫症1型(NF1、レックリングハウゼン病)の診断を受けています。亮さんと茜さんはすでに社会人として自立していますが、将来への不安がないわけではありません。真由美さんは言います。
「私が子どもの頃とは状況が異なりますが、NF1に対する社会の理解は、今もなお十分ではありません。ですが病気は誰のせいでもないし、寄り添って生きるのが私たち家族の人生なんだと、前向きに考えるようにしています」
真由美さんに残るNF1についての最も古い記憶は、小学3年生の夏休みのこと。プールで友だちから「それ何?」と、腕の3cmほどのあざを指さされました。そのあざは、NF1の症状の一つである「カフェ・オ・レ斑*」。母親から「そばかす」と言われていたあざも同じくカフェ・オ・レ斑で、顔に広がり目立っていたため、一部の男の子たちからいじめられることもありました。「そばかすによい」と聞き、ビタミン剤を積極的に服用していましたが、変化を感じたことはありませんでした。
「当時は私も両親もただのそばかすだと思っていましたから、皮膚科などで診てもらったことはありません。小学生の頃はたくさん悩んだし、つらい思いもしましたが、中学に進むといじめを受けることはなくなりました。だからそれ以降は、あまり気にしなくなりました」
- 淡いミルクコーヒー色~濃い褐色のしみ・あざ

中学校では体操に励んでいた真由美さん。腰の痛みや打撲の治療のために通院していた整形外科で、骨の変形を指摘されたことがありました。真由美さんは「今思えば、あれもNF1の症状だったのかもしれません」と言いますが、整形外科医から「この年頃にはよくあることです」と説明を受けたため、詳しく調べたことはありませんでした。
真由美さんの体に変化がみられたのは、結婚し、長男の亮さんを出産した20歳代半ばのことでした。出産前から出産後にかけて、体表にできものがいくつか、みられるようになりました。
「なんだろう?とは思いましたが、数がそれほど多いわけではなかったため、あまり気にしていませんでした」と語る、真由美さん。これがNF1による皮膚の神経線維腫であることがはっきりするのは、もう少し先のことです。
